松琴(しょうきん)は、作品の題材:モチーフに境界を画することはしなかった。
経文、仏画、漢文、詩歌・・・など、あらゆる分野において、己の琴線に触れたものを、独自の作風に昇華していった。
竹聯(ちくれん)・円額・風炉先屛風などの大作から、茶道具、花器、根付、栞(しおり)、ペーパーナイフといった座右に置いて愛着の増すもの等々、当時の工房には無限の時と夢が広がっていた。
その工房あとに設けられた当ギャラリーでは、松琴の遺作の中でも、代表的な竹聯を中心に展示される。
「自然にさからうことなく、自然と一体になることが禅的悟りの一つでは」と、常に語っていた松琴は、十代のころ、曹洞宗の名僧・橋本恵光(えこう)老師から在家得度の授戒を得た。そして、そこからひたすら竹と真向かっていった。
優しい出で湯と竹の香、竹林を透す鐘の音と桂川のせせらぎ、そして千二百年の歴史を刻む厳しい「修禪」の寺、その中の一つとして松琴の存在があった。
平成4年、修禅寺本堂に「観音経」の双聯が奉納された。繍仏「聖観音」は松琴の母キヨによるもので、昭和初期に奉納された。
「聖観音」の本画は、修禅寺第三十八世住職・丘球学(おかきゅうがく)老師の御染筆。(一般非公開)
松琴は、仏教精神に基づく青少年育成活動にも賛同し、「現代名僧墨蹟展」の全国巡回展に、書画色紙を約20年間にわたり賛助出品した。
その温かみある画は、毎回、大変に好評であった。ギャラリーでは、これら色紙額も併せて展示される。
ギャラリー・ショップでは、オリジナルお香や、松琴の色紙絵はがきをはじめ、和ろうそく、香合、香立て、文香、防虫香など、厳選された和小物も取り揃えております。
春夏秋冬、町の日々の息遣いに寄り添う、修禅寺の鐘の音に託したお香。 白檀をベースに、さまざまな草根木皮を配合した、天然香料100%の原料で作られています。
箱書きは、吉野真常・修禅寺第43世御住職の御染筆。